日次の売上レポートで計算すると黒字のSKUが、手数料や値引きを足すと手元にほとんど残っていない。そう感じたことはありませんか。
この記事では、SKU別の広告後粗利(広告費まで差し引いたあとに手元に残る粗利)を実額で出すのに必要な6系統のデータを整理します。あわせて、それぞれを「どこから・どの頻度で・何をキーに」集めるか、日次レポートだけで計算したときとの差を仮の計算例で示し、データを集める前に決めておく5つの項目も紹介します。
自社ECのデータ集めで分かったこと
2026年9月23日から26日にかけて、自社ECの利益を立て直す計画の土台づくりとして、必要なデータを一か所に集めました。
取得先は次のとおりです。
- モールの管理画面(ビジネスレポートの日次、決済トランザクション明細、手数料の見積り、プライム割引、クーポンの全履歴)
- 広告コンソール
- もう一方のモールの管理画面
- 会計データ
- 市場データを扱う外部ツール
方針は2つだけ決めました。ひとつは、すべて読み取り専用にすること。書き込み系の呼び出しは仕組みで機械的に止めています。もうひとつは、ログインは人がブラウザで行い、その後の取得だけをスクリプトに任せることです。
この作業で改めて分かったのは、日次の売上レポートは利益計算の入口にすぎないということでした。
日次レポートだけでは抜ける5つのコスト
日次の売上レポートには、売上と販売数はありますが、次の5つが入っていません。
- 販売手数料・配送代行手数料の実額:カテゴリ・サイズ区分・時期で変わります。見積りと決済明細の実額がずれることがあり、SKU単位で見ると無視できない差になります
- クーポン・プライム割引・ポイント原資:期間限定で付けたり外したりするため、全履歴を追わないとその月に値引きでいくら使ったかが出ません
- 広告費のSKU配賦:広告コンソールの数字をSKUに割り当てないと、どのSKUが広告で利益を削っているか分かりません
- 返品・返金:返金額と、再販できない在庫の損失です
- 在庫保管料:月額の保管料に加え、長期保管の追加料金があります
手数料率や料金はカテゴリ・時期で異なります。最新の内容は各モールの公式ヘルプを確認してください。
6系統の取得表(どこから・どの頻度で・何をキーに)
キーは全系統で「SKU」と「日付」にそろえます。
- 売上日次:取得元はモール管理画面のビジネスレポート(日次)。頻度は毎日。キーはSKU×日付
- 決済明細(手数料の実額):取得元は決済トランザクション明細。入金サイクルごとに出るため、注文日ベースで日次に割り戻します。キーはSKU×注文日
- 値引きの全履歴:取得元はクーポン・プライム割引の履歴、ポイント設定。施策の開始・終了ごとに、全期間をまとめて取得します。キーはSKU×適用期間(日次に展開)
- 広告費:取得元は広告コンソール。頻度は毎日。キーは広告対象のSKU×日付(複数SKUをまとめた広告はルールを決めて按分)
- 返品:取得元は返品・返金レポート。毎日または週次。キーはSKU×返金日
- 在庫保管:取得元は在庫保管料のレポート(長期保管を含む)。月次なので、日数で日次に按分します。キーはSKU×月
いちばん手間がかかるのは決済明細です。入金サイクル単位で出るため、日次レポートと同じ並びにするには注文日で並べ直す必要があります。
仮の計算例:日次レポートだけの粗利と広告後粗利の差
以下は説明のための仮の計算例です。実際の数値・料率ではありません。
前提(すべて仮置き)
- 販売価格3,000円、原価900円、月の販売数300個(月の売上90万円)
- 販売手数料10%、配送代行手数料は見積り450円
日次レポートと手数料の見積りだけで計算した場合
- 売上90万円から、原価27万円と見積り手数料22.5万円(1個750円)を引くと、粗利は40.5万円(1個あたり1,350円)
6系統を揃えた場合に追加で引くもの
- 配送代行手数料の実額が520円だった(サイズ区分の違い):差額70円×300個で2.1万円
- クーポン10%を月の半分(150個分)で配布:300円×150個で4.5万円(手数料が少し下がる効果は簡略化のため省略)
- 広告費:ACoS 25%(ACoS=広告費÷広告経由の売上)、広告経由の売上36万円で9万円
- 返品・返金による損失:1.2万円
- 在庫保管料(長期を含む):1.5万円
広告後粗利は40.5万円から18.3万円を引いて22.2万円、1個あたり740円です。日次レポートだけで見た1,350円と比べると、ほぼ半分になります。差の大半は広告費と値引きでした。
数字が揃ったあとの判断基準
- 値引きの全履歴を引いた広告後粗利がマイナスのSKUは、広告の調整より先に値引きの設計(率・期間・対象)を見直す。広告を絞っても、値引きで赤字なら構造は変わりません
- 手数料の実額が見積りより高いSKUは、サイズ区分と梱包を疑う。数ミリの差で区分が上がっていることがあります
- 広告後粗利がプラスでも、在庫保管料の比率が高いSKUは発注量と回転日数を先に見る
データを集める前に決める5つ
- SKUのキーを統一する(モール・広告・会計で表記が揺れると突き合わせできません)
- 期間の切り方を決める(日次でそろえるか、入金サイクルでそろえるか)
- 読み取り専用にする(集める作業に書き込み権限は要りません。最初から渡さないのが安全です)
- 人がログインする工程を残す(認証は人が持ち、取得だけを自動化する)
- 取れないデータは「無い」と記録する(空欄を0として扱うと、利益が高く見えます)
データ集めを仕組み化しても、人が持つ場所は残ります。ログイン、数字の解釈、どのSKUから手を付けるかという優先順位の判断です。
まとめ
- 広告後粗利の実額は、売上日次・決済明細・値引きの全履歴・広告費・返品・在庫保管の6系統で出せる
- 6系統はどれも管理画面から読み取りだけで取れる。書き込み権限は最初から渡さない
- キーはSKUと日付。入金サイクルや月次のデータは日次に割り戻す
とはいえ、6系統のキーをそろえ、決済明細を日次に割り戻し、値引きの履歴を全期間で追う作業は、最初の1回がいちばん重いのも事実です。自社で揃えるのが難しい場合は、まず現状を確かめるところから始めてみてください。赤兎馬では、店舗URLをいただければ、利益の穴になっていそうな箇所をレポートでお返しする無料EC診断を行っています。
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