「ファーストビューを直せばCVRが上がって売上も伸びる」——基本的には正しい考え方です。ただし、すべてのSKUに当てはまるわけではありません。広告後粗利が赤字のSKUでCVRを上げると、売れる数が増えるぶん、損失も比例して増えていきます。
この記事では、(1) なぜCVR改善が逆効果になるSKUがあるのか、(2) 直すべきSKUを「利益×CVR」の2軸で選ぶ考え方、(3) ページ改善に着手する前のチェックリスト、を整理します。CVRの上げ方そのものではなく、「どのSKUから直すか」という優先順位の話です。
CVR改善が「損失を加速させる」仕組み
広告後粗利とは、売上から原価・各種手数料(販売手数料・FBA配送代行手数料など)・広告費まで引いて、最終的に手元に残る粗利のことです。ここがマイナスのSKUは、1個売れるごとに赤字が積み上がっている状態にあります。
CVR(転換率=閲覧に対して購入に至った割合)の改善は、「売れる数」を増やす施策です。だから広告後粗利がプラスのSKUなら、改善はそのまま利益増につながります。一方、広告後粗利が赤字のSKUでCVRを上げると、増えた販売数のぶんだけ損失も拡大します。ページを良くするほど損が増える、という逆転が起きるわけです。
まず出すべき数字:広告後粗利と損益分岐ACoS(仮の計算例)
以下は説明のための仮の計算例です(手数料率はカテゴリ・時期で異なります。最新は各モール公式をご確認ください)。
- 販売価格:3,000円
- 原価:1,200円
- 販売手数料(仮に15%):450円
- FBA配送代行手数料(仮):500円
この時点の「広告前の粗利」は、3,000 − 1,200 − 450 − 500 = 850円(粗利率 約28%)。
ここで効いてくるのが損益分岐ACoSです。ACoS(広告費 ÷ 広告経由売上)が、広告前の粗利率(このSKUなら約28%)を超えると、広告後粗利は赤字に転じます。仮にACoS 30%で運用していると、広告費は売上の30%=900円。広告後粗利は 850 − 900 = −50円。1個売れるごとに50円の赤字です。
このSKUでCVRを倍にしても、増えるのは「50円の赤字を出す取引」の数。直すべきは、まずこの損益構造のほうです。
どのSKUを直すか:利益×CVRの2軸マップ
直す順番は、SKUを2軸で並べると整理できます。縦軸に「広告後粗利(プラス/マイナス)」、横軸に「CVR(低い/高い)」を取り、4象限で考えます。
- ①広告後粗利プラス × CVR低 →【最優先でページ改善】改善効果がそのまま利益に乗る、いちばん費用対効果の高いゾーン。
- ②広告後粗利プラス × CVR高 →【広告投資を増やす】伸びしろはページより広告側。予算を攻める判断。
- ③広告後粗利マイナス × CVR低 →【ページより先に利益構造】価格・原価・ACoSを見直す。CVRが低いぶん損失総額は小さいが、直すなら利益を先に。
- ④広告後粗利マイナス × CVR高 →【最も危険・即手当て】よく売れるのに赤字で、売れるほど損が拡大する。ここでCVR改善をやるのは最悪手。まず広告ACoSを損益分岐まで絞るか、値上げ・原価交渉を検討する。
ポイントは、ページ改善(CVR向上)を最優先にすべきは①だけ、ということです。④はむしろ「売れすぎ」が損を生むので、ブレーキ(広告の絞り込み)と利益構造の手当てが先になります。
ページ改善に着手する前のチェックリスト
着手前に、そのSKUについて次の5つを確認してください。
- 広告後粗利はプラスか(売上 − 原価 − 手数料 − 広告費)。
- 損益分岐ACoS(=広告前の粗利率)を、実際のACoSが超えていないか。
- 手数料は最新の料率で引いているか(販売手数料・FBA料金は改定される)。
- CVRが低い原因は「ページ」か、それとも価格・在庫切れ・レビュー・配送条件か。
- 直した先(CVR向上)が、そのSKUの利益増になるか、損失増になるか。
5番でNo(損失増)になるSKUは、ページより先に①価格・原価、②広告ACoSの設計に手を入れるのが正しい順番です。
まとめ
CVR改善は強力な施策ですが、効くのは広告後粗利がプラスのSKUに限られます。赤字SKUでやると、売れるほど損が増える。だから「どう直すか」の前に「どのSKUを直すか」を、利益×CVRの2軸で決めることが先決です。手元のSKUを4象限に並べるだけでも、優先順位はかなり見えてきます。
まずは自社の主力SKUを「広告後粗利がプラスか」で一度仕分けしてみてください。店舗URLでの無料EC診断もやっています:https://ec-sekitoba.jp/#contact