「無料で診断します」と言う会社は山ほどある。でも実際に頼んでみると、フォーマットに数字を差し替えただけの薄い資料が返ってくる——そんな経験をしたEC担当者は多いと思う。
私たち赤兎馬も、以前は同じ壁にぶつかっていた。1件の診断レポートをまともに書こうとすると、リサーチと分析で数時間かかる。営業段階で無料提供するにはコストが重すぎて、「お問い合わせをいただいてから」の後ろ倒しになってしまう。これでは価値先行の営業にならない。
そこで、生成AI(Claude)と現役セラーのレビューを組み合わせて、店舗URL 1本から診断レポートを生成する仕組みを内製した。この記事はその実話メモと、AIに任せた部分・人が絶対に残した部分の線引きについて書く。
なぜAIで内製したのか
診断レポートを「無料の営業ツール」として機能させるには、次の3条件を同時に満たす必要があった。
- 1件あたりの制作コストが低い(無料で配れる採算)
- 相手ごとに個別最適(テンプレの差し替えではない)
- 現役セラーの視点で読める(AI丸投げの当たり障りない一般論では意味がない)
従来のやり方だと1と2がトレードオフになる。個別最適にすると数時間、テンプレ化すると価値が薄い。AIに公開データの収集と一次分析を任せ、人は「解釈と補正」に集中する構造にしたら、この二律背反が緩んだ。
仕組みの全体像
入力は店舗URL 1本のみ。出力は1本のWebレポート(診断ページ)。中では次のような処理が走っている。
- 公開データの収集:モール検索結果での表示順位、商品ページの公開情報(価格・レビュー数・画像点数など)、関連する公的統計(市場規模・カテゴリ動向)
- AI(Claude)による一次分析:検索順位の分布から流入構造の推定、ページ表示要素から改善余地の抽出、価格・カテゴリから利益構造の兆候、競合上位ページとの差分
- 人によるレビューと補正:AIの出力を現役セラーが必ず読み、事実誤認・的外れな提案・優先順位のズレを直す
- レポート生成と送付
重要なのは、AIが出した結論をそのまま送らないという運用ルール。ここを外すと「精度の低い自動生成物」に転落する。
AIに任せた部分/人が残した部分
線引きを具体的に書いておく。同じような仕組みを作りたい人の参考になると思う。
AIに任せた(機械的でスケールする作業)
- 公開データのスクレイピングと整形
- 検索順位・ページ表示要素の突合
- 「一般的にこう言われる打ち手」の候補出し
- レポート文書の下書き
人が残した(判断・責任・信頼)
- 優先順位の判定:AIは「改善余地10個」を平気で出す。実際に効くのは上位2〜3個。ここの取捨選択は経験値がいる
- 数字の含意の読み替え:例えば「レビュー数が少ない=弱み」と機械は書きがちだが、新規上位表示狙いのSKUなら順序が違う
- 景表法・薬機法チェック:AIは平気で「必ず改善します」に近い書き方をする。人が全部書き直す
- 相手のビジネス構造の理解:地方の工芸品メーカーと教育系ECでは、同じ「CVR改善」でも意味が違う
具体的にどんな観点が出るか
匿名の実例で挙げると、こんな指摘が並ぶ(あくまで一例)。
- 検索順位:主要KWで20〜30位に停滞。指名KWは1位だが検索ボリュームが月◯件で純粋想起の弱さが浮き彫り
- ページ改善余地:1枚目画像に情報が詰まっておらず、冒頭3要素(誰に/何が違う/なぜ信じられる)が不明瞭
- 利益構造の兆候:販売価格に対して手数料・広告費・原価を積み上げると、粗利が薄い可能性。損益分岐ACoSの見立てが必要
- 競合差:上位競合は動画・比較表・使用シーンを揃えており、ページ滞在の設計に差がある
実際の申込時には、これらを店舗ごとに具体化して書く。「PDCAを回しましょう」で終わらせない。
誠実な線引き:この診断でわかること・わからないこと
ここは絶対に書いておきたい。この無料診断は公開データに基づく簡易版であり、次の限界がある。
- 実際の広告レポート(Amazon Ads / RPP等)を見ていないので、ACoS・ROAS・キーワード別の勝ち負けは推定に留まる
- 原価・実額の手数料構造がわからないので、SKU別損益は「一般的な料率での仮の計算例」
- 転換率・客単価・LTVなど、Seller CentralやGA4を開かないと確認できない指標はレポートに含まれない
実データ(広告レポート、原価表、GA4)を共有いただければ精度は上がる。逆に、無料の段階で「必ず売上2倍にできます」と言うのは景表法的にもビジネス的にも不誠実で、私たちはやらない。
AIで営業を仕組み化するときの判断基準
最後に、同じような仕組みを検討している人向けの判断基準を置いておく。
- 無料化して意味があるか:営業リードの入口として機能する内容か。ならないなら有料商品として設計すべき
- 人のレビューが挟めるか:完全自動で送ると事故る。1件10〜20分でも人が読める体制か
- 相手ごとに個別最適されているか:テンプレ差し替えなら、無料でも読み手にバレる
- 限界を正直に書けるか:AI生成物の弱点を隠すと信頼を毀損する。線引きこそ差別化
まとめ
AIで診断を仕組み化した結果、「まず現状を可視化してから話す」という価値先行の営業がやっと成立するようになった。ただしAI任せではなく、人のレビューを二段目に置いた構造がそのまま信頼の源になっている。
自社のECの「利益の穴」がどこにあるのか、まず現状を見てみたいという方は、店舗URLをいただければ無料でレポートをお返ししています。押し売りはしません。読んでみて、必要なら次を相談してください。
→ 赤兎馬 無料EC診断:https://ec-sekitoba.jp/#contact