赤兎馬赤兎馬EC運用支援

AIに営業リストを作らせて最初に決めたのは「取らないデータ」だった

#生成AI #AI活用 #EC運用 #ネットショップ運営 #業務効率化 #ClaudeAI

業務にAIを入れるとき、最初に決めるべきは「何を速くするか」ではありません。

「何をやらないか」です。

私たちがEC支援の営業リストを作る工程を自動化したとき、着手して最初にやったのは高速化ではなく、線引きの設計でした。その理由と、決めた内容を書きます。

なぜ速さより先に線引きだったのか

理由は単純で、AIを入れると間違いも同じ速度で増えるからです。

人が手作業でリストを作っていた頃は、1件ずつ目で見るので、おかしなデータが混ざれば気づけました。処理量が数百件・数千件になると、それが効かなくなります。

そして情報収集の失敗は、やり直しがきかない種類の失敗です。取ってはいけないデータを取ってしまった、無関係な相手にアプローチしてしまった。こうした事故は、後から「間違えました」で戻せません。

速く動く仕組みを作る前に、止まる条件を先に書く。順番はここしかありませんでした。

決めた4つのこと

1. データ元は公式APIの正規利用を第一選択にする

取得手段には優先順位を付けました。公式に提供されているAPIがあるなら必ずそれを使う。公開情報を取得する場合も、サイト側が示している取得ルールを尊重する。

そして重要なのは、ブロックされたときに回避する仕組みは作らないと決めたことです。取得を止められたなら、それは「取るな」という意思表示なので、止まる。回避する技術的な手段は存在しますが、使わないと最初に決めました。

これは技術の問題ではなく、事業として何を選ぶかの問題です。

2. 取得範囲を、公開が義務づけられている情報に限定する

事業者情報の一部は、法律で公開が求められています。私たちが扱う範囲は、そうした公表情報に限定しました。

「技術的に取れるか」と「取っていいか」はまったく別の問いです。前者だけで判断すると、後から取り返しのつかない範囲まで進みます。ここは専門家の確認を前提に、自社としての線引きを文書にしました。

なお、法令の具体的な解釈は事案によって異なります。この記事で断定的なことは書きません。自社の線引きを、自社の責任で決めて文書化したというプロセスの話として読んでください。

3. 会社を取り違える事故を防ぐチェックを工程に入れる

これは実際に危なかったところです。

社名で情報を探すと、同名・類似名の別会社が引っかかります。人が1件ずつ確認していれば気づきますが、自動化するとそのまま通ります。結果として、無関係な会社の情報がリストに混ざる。

対策として、取得した情報が本当に対象の会社のものかを照合するチェックを、工程の中に必ず挟むようにしました。照合が通らないものは、リストに載せずに保留に落とします。

AIが速くしたぶん、確認は自動化して埋め合わせる。ここを人の目視に戻すと、速くした意味がなくなります。

4. ガードを口約束にせず、自動テストとして固定する

一番効いたのがこれです。

「この情報は取らない」「ここで止まる」というルールを、ドキュメントに書くだけにしておくと、半年後の自分が忘れます。あるいは、急いでいるときに例外を作ります。

なので、決めたガードは自動テストとして書きました。ガードを外す変更を加えると、テストが落ちて処理が進まなくなります。判断力ではなく仕組みで守るという形にしたわけです。

これは自分の意志を信用していないという話ですが、実務的にはこれが正解でした。

AIに任せてよい工程と、人が残る工程

今回の経験を一般化すると、切り分けはこうなります。

境界線は「取り返しがつくかどうか」で引いています。やり直せる工程は任せ、やり直せない工程は人が門番に残る。この基準はEC運用でもそのまま使えます。

EC運用に置き換えると

同じ構造は、EC運用でAIを使うときにも当てはまります。

特に最後の1つは重要です。商品ページの表現は、景品表示法などの規制に関わります。AIが書いた文章をそのまま公開するのは、法令チェックを飛ばすのと同じです。生成の速さと、公開の責任は別の話です。

やらないことリストの作り方

難しく考えなくても、次の3つを書くだけで機能します。

  1. 絶対にやらないこと(例:取得を止められたら回避しない)
  2. 人の確認を必ず通すこと(例:外部に出る文章、価格の変更)
  3. 止まる条件(例:照合が通らない、想定件数を大きく超えた)

そして書いたら、可能な範囲で仕組みに埋め込む。チェックリストとして紙に置いておくだけでは、忙しいときに飛ばされます。

AI活用の失敗は「精度が出ない」より、速く間違ったことを大量にやってしまうほうが痛い。ここだけは、着手前に決めておく価値があります。

店舗URLでの無料EC診断もやっています:https://ec-sekitoba.jp/#contact

なお本文中の内容は方針と考え方の粒度にとどめており、具体的な実装手順やプロンプトは記載していません。

引用元
・特定商取引法に基づく表示(事業者の公表義務):消費者庁 特定商取引法ガイド ・商品表示に関する規制:消費者庁 景品表示法の解説ページ ※法令の解釈は事案により異なります。本文は自社での線引きのプロセスを述べたものであり、法的助言ではありません。実務上の判断は専門家にご確認ください。

関連サービスAI内製化道場(社内に「作れる人」を育てる月額プログラム)EC運用支援