「競合が月にいくら売っているか」——EC 運用で一度は知りたくなる数字です。
世の中には市場調査 SaaS が複数あり、月額数千円〜数万円で競合の推定売上を出してくれます。便利です。ただ、うちのように SKU も限られていて、見たいカテゴリが 1 つに絞れる場合、月額を払い続ける必要はあるのか?と立ち止まりました。
結論から言うと、公開データ(BSR =売れ筋ランキングとレビュー件数)と生成 AI があれば、競合売上の「レンジ推定」は内製できます。開発は数日、ランニング費用ゼロ。もちろん万能ではありません。この記事では、実際に Claude と対話しながら組み立てた考え方と、精度の限界・答え合わせの仕方まで、正直に書きます。
※本文中の金額はすべて説明のための 仮の計算例 です。
なぜ「外部 SaaS を使わない」を選んだか
判断基準は 3 つでした。
- 見たい範囲が狭い:横断で全カテゴリを見る必要がなく、自社が戦うカテゴリ 1 つに絞れる
- 必要なのは確定値ではなくレンジ:意思決定は「この価格帯は月商 100〜300 万円ゾーンか、1,000 万円超ゾーンか」が分かれば十分
- 外部依存を減らしたい:SaaS の仕様変更・値上げ・提供停止のリスクを持ち込みたくない
逆に言うと、全カテゴリを俯瞰したい/週次で数百 SKU を機械的に監視したい会社は、素直に SaaS を使うべきです。「自社で回るか」は要件次第で、SaaS が悪いわけではありません。
推定ロジックの骨子(BSR × レビュー増加速度)
公開情報から取れる材料は主に 2 つです。
- BSR(Best Sellers Rank):カテゴリ内の売れ筋順位。カテゴリを 1 つに絞ると、順位と販売数の関係を近似しやすい
- レビュー件数の増加速度:一定期間(例:30 日)にレビューが何件増えたか。レビュー投稿率を仮定すれば、期間販売数の下限を推定できる
この 2 つを Claude に与え、「この BSR 帯・このレビュー増加速度なら、月間販売数はどのレンジに収まりそうか」を カテゴリ 1 つに絞って 推論させました。カテゴリを絞るのがミソで、横断すると BSR と販売数の関係が崩れて精度が一気に落ちます。
判断基準(if-then)に落とすと、こんなイメージです:
- BSR 上位帯 × レビュー増加が速い → 月間販売数レンジ 上
- BSR 中位 × レビュー増加が鈍い → 月間販売数レンジ 中〜下
- BSR 中位 × レビュー増加が速い → 掲載直後の伸び盛り。単月ではなく複数月のトレンドを見る
売上レンジは、そこに 想定販売価格帯 を掛けるだけです。
精度の限界と、どう答え合わせしたか
正直に書きます。この推定は確定値ではなくレンジで、外れることもあります。誤差要因は:
- レビュー投稿率は商品・カテゴリで大きくブレる
- セール・広告のタイミングで BSR が短期的に跳ねる
- 定期購入比率が高い商品は、BSR とレビュー速度の関係が崩れる
そこで、自社商品で答え合わせをしました。自社は実売数がわかっているので、同じロジックに突っ込んで推定を出し、実売と比較する。ズレの傾向(何倍上振れ・下振れするか)を掴んで、他社推定に係数として反映する。これで「桁を外さない」精度には持ち込めました。
この作業をやらずに他社の数字だけ出すのは危険です。必ず自社で校正してから使ってください。
推定売上が分かると、何が変わったか
意思決定が変わった、というのが率直な感想です。
- 価格帯の選定:「上位 5 SKU が月商 1,000 万円超のゾーン」だと分かれば、真正面から殴り合うのは避け、隣のニッチを狙う判断がしやすい
- 広告後粗利の設計:競合の売上規模感から逆算して、「このカテゴリで戦うなら CPC いくらまで許容できるか」の当たりが付く
- 仕入れ判断:月商レンジが小さいカテゴリに、大ロット発注する怖さが可視化される
数字がなかった頃は「なんとなく強そう/弱そう」で判断していたのが、「レンジで戦況が見える羅針盤」ができた。それが一番の変化でした。
まとめ:SaaS を使うか内製するかは要件次第
- 見たい範囲が 1 カテゴリに絞れる なら、公開データ + AI で内製できる
- 必要なのは 確定値ではなくレンジ。意思決定の粗い羅針盤で十分な場面は多い
- ただし 自社実売での答え合わせ は必須。やらずに他社推定だけ出すと桁を外す
- 全カテゴリ横断・週次で機械監視したいなら、素直に SaaS を使うべき
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