AIエージェントに広告や在庫の分析を任せる範囲を広げるとき、多くの人が最初に考えるのは「どこまで賢く動かせるか」だと思います。私たちは逆でした。最初にやったのは、AIが外部サービスに書き込めないようにするガードの実装です。今日はその実話メモを、順番と判断基準まで含めて共有します。
読むと分かること:
- なぜ「触るな」ではなく「触れない」設計にしたか
- どの API を何の基準で遮断したか(考え方だけ、実装コードは伏せます)
- AI に任せる/人が実行する、の切り分け基準(if-then)
※以下の金額・比率は説明のための仮の計算例です。実際の手数料・料率はカテゴリ・時期で異なるため、各モール公式(Amazon Seller Central / 楽天 RMS ヘルプ 等)を参照してください。
そもそも「AIに運用を任せる」の正しい順番
分析 → 提案 → 実行。この順番は崩さない、と最初に決めました。
- 分析:レポート・売上・在庫・広告実績の読み取り(GET のみ)
- 提案:改善案・入札や予算の変更案をテキストで出す
- 実行:実際にキャンペーンや価格を書き換える(POST/PUT/PATCH/DELETE)
このうち 入札・予算・価格・在庫の変更は、AI側の判断ではなくツール呼び出しの時点で物理的に止める。「AIは賢いから任せて大丈夫」ではなく、「誤操作しても被害が出ない設計」を先に置く、という発想です。
なぜ「先に」ガードだったか
広告後粗利(売上から原価・モール手数料・配送・ポイント原資・広告費を引いて残る利益)は、入札単価と価格に直結します。仮の計算例で、販売価格 3,000 円・原価と手数料合計 60% の SKU を考えます。広告費率(対売上)が 20% なら残る利益は 20%、これが 30% に膨らむと利益は 10% まで削れます。入札の桁を 1 つ間違えれば、一晩で赤字を積める構造です。
人間なら「なんか広告費、多くない?」で手が止まりますが、AI はためらいません。だから、賢さで防ぐのではなく、呼び出せる API を機械的に絞る方針にしました。
遮断した「書き込み系」の範囲(考え方)
対象は、金額と在庫に効く外部書き込みに絞りました。実装の固有名やパスは伏せますが、範囲の考え方はこうです。
- 広告 API 側:キャンペーン・広告グループ・キーワード・入札・予算の作成/変更/削除
- 出品 API 側:出品情報・価格・在庫・フィード投入
- 利用中の運用ツール側:入札戦略・CPC・在庫連携・購読設定の変更系エンドポイント
すべての POST/PUT/PATCH/DELETE を書き込み系として拒否。レポート取得・GET は許可、ドライラン指定は常に許可(安全に「もしやったら何が起きるか」だけ返せる)。
判断基準(if-then でシンプルに)
迷ったときに引く 3 行のルールに落としました。
- 読むだけの処理(レポート・在庫参照・売上集計)→ AI に任せる
- 数字を動かす処理(入札・予算・価格・在庫)→ 人が承認して人が実行
- どうしても自動化したいなら → 金額と回数の上限を機械側で持つ(例:1日 5,000 円まで/変更 10 回まで、を超えたら自動停止)
この 3 行だけで、日々の「これはAIに渡していい?」の 9 割は判断できます。
併せて入れた「変更履歴の突き合わせ」
ガードと同時に、人が広告ツール上で行った変更履歴を毎日取得し、施策ログ(誰が・いつ・何を・なぜ変えたか)と突き合わせる仕組みも入れました。AI の提案と人の実行を別チャネルで記録するのが狙いです。
意味は 2 つあります。
- AI の提案が採用されたのか棄却されたのか、あとから追える
- 人が独断で触った変更も、粗利変動と突き合わせて評価できる
属人化した「なんとなく入札を下げた」を、月末に効いたか効かなかったかで学習に回せます。
テストは「誤って止める方向」に倒す
ガードの単体テストは、誤って許可するより誤って止める方向に倒す方針で書きました。GET と明示ドライランは通す、それ以外の書き込みは疑わしきは拒否。運用初期に「あれ、これも止まった」が出るのは想定内で、ホワイトリストで戻すほうが、うっかり書き込みを通すより 100 倍安全です。
AI導入で最初に決めるのは「何をさせないか」
AI に任せる範囲は、あとからいくらでも広げられます。でも、一度赤字を積んだ広告費と、消してしまった出品データは戻ってきません。だから最初に決めるのは「何をさせるか」ではなく「何をさせないか」でした。
チェックリスト(AI に運用を渡す前に見る 5 項目):
- [ ] 書き込み系 API を機械的に遮断する仕組みがあるか(人の指示ではなく物理ガード)
- [ ] レポート取得と書き込みが別権限で分離されているか
- [ ] ドライラン/シミュレーションだけを AI に許す経路があるか
- [ ] 人が行った変更履歴を毎日ログ化しているか
- [ ] 自動化する場合、金額と回数の上限を機械側で持っているか
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最後にひとつだけ。「どの業務なら AI に渡せて、どこは人が握るべきか」の切り分けは、業種・SKU 数・広告予算の規模で最適解が変わります。自分たちで線を引くのが難しければ、まず現状を可視化するところからで大丈夫です。
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