運用代行を選ぶとき、提案書の見た目や実績数で決めていませんか。
私たち自身が支援会社なので、この記事は自分に不利な情報も含みます。ただ、発注側が正しく比較できないと、業界全体が「安さ」と「見栄え」で選ばれる構造から抜けられません。だから発注側の武器として書きます。
以下の7つを聞けば、その会社が運用をどの解像度で見ているかは、だいたい分かります。
質問1:成果指標を何で置きますか
良い答え:「まずSKU別の粗利率を出させてください。そのうえで広告後粗利、つまり広告費を引いたあとに手元に残る金額で置きます」
注意したい答え:「ROASを目標に運用します」だけで終わる
ROASは売上を広告費で割った指標で、利益が入っていません。ROAS 500%でも、粗利率の薄い商品なら赤字になり得ます。ROASを使うこと自体は悪くないのですが、利益の話が一度も出てこない提案は注意です。
質問2:手数料をどう計算に入れますか
良い答え:「販売手数料・配送費・ポイント原資の店舗負担分まで、実額で取り込みます。カテゴリ概算では黒字赤字が入れ替わることがあるので」
注意したい答え:「一般的な手数料率で試算します」
単品粗利が1,000円台の商品では、手数料の概算と実額の差が数百円出ることがあります。それは黒字と赤字が入れ替わる幅です。ここに無頓着な会社は、利益の議論に踏み込む準備がありません。
質問3:SKU別の損益を出せますか
良い答え:「出します。全社平均だと、黒字SKUが赤字SKUを覆い隠すので」
注意したい答え:「全体の数字で管理します」
平均は赤字を隠します。全体の利益率が20%でも、内訳を開くと大きく稼ぐSKUと出血しているSKUが混在しているのが普通です。SKU別に出せない会社は、どこを止めてどこを伸ばすかを判断できません。
質問4:広告を止める判断基準を言語化できますか
良い答え:「損益分岐ACoSを基準に、検索語句単位で判定します。在庫日数が閾値を割ったSKUは絞ります」
注意したい答え:「様子を見て調整します」
止める基準がない運用は、止められない運用です。基準を言語化できるかどうかは、その会社が過去にちゃんと止めてきたかを映します。
質問5:ページ改善と広告のどちらを優先するかを、どう決めますか
良い答え:「そのSKUの広告後粗利が赤字なら、広告を増やす前にページです。赤字SKUで流入を増やすと損失が加速するので」
注意したい答え:「両方やります」「まず広告で流入を作りましょう」
広告代行の会社は構造的に「広告を増やす」提案に寄ります。それが悪いのではなく、寄る構造があることを発注側が理解しておく必要があります。優先順位の根拠を利益で説明できるかを聞いてください。
質問6:レポートに「やめた施策」は載りますか
良い答え:「載せます。試して効かなかったものと、その理由を書きます」
注意したい答え:数字の推移だけが並ぶレポートの見本
うまくいったことだけが載るレポートは、運用ではなく報告書です。運用は打ち手を試して外すことの繰り返しなので、外した記録がないレポートは、そもそも試していないか、隠しているかのどちらかです。
質問7:契約形態と、利益相反の説明はありますか
良い答え:「広告費連動なので、広告費を増やすほど当社の報酬が増える構造です。だから増額の提案には必ず利益の根拠をつけます」
注意したい答え:契約形態の利益相反について、聞くまで触れられない
契約形態には、それぞれ構造的な癖があります。
- 広告費連動:構造的な癖 広告費を増やす提案に寄りやすい
- 売上成果報酬:構造的な癖 利益より売上を優先しやすい
- 固定報酬:構造的な癖 工数を抑える方向に寄りやすい
どれが正しいという話ではありません。大事なのは、その癖を自分から説明する会社かどうかです。説明できる会社は、自分の立場を自覚したうえで提案しています。
「安さ」の中身から何が抜けているか
安い見積もりが悪いわけではありません。ただ、安さには必ず理由があります。よくあるのは次のどれかです。
- 分析の工数が入っていない:レポートが自動生成のまま、解釈が付かない
- SKU別の作業が入っていない:全体最適だけで、個別の判断がない
- 改善提案の範囲が広告に限定されている:ページ・在庫・価格には触れない
つまり安い見積もりは「同じことを安くやる」のではなく、やる範囲が狭いことが多い。比較すべきは金額ではなく、その金額に何が含まれているかです。7つの質問は、そこを可視化するためのものです。
相見積もりチェックリスト
- 成果指標に利益(広告後粗利)が含まれているか
- 手数料を実額で扱うか
- SKU別の損益を出せるか
- 広告を止める基準を言語化できるか
- ページと広告の優先順位を利益で説明できるか
- レポートに失敗が載るか
- 契約形態の利益相反を自分から説明するか
最後に
ここまで読んで「うちの数字が揃っていないから、そもそも比較できない」と感じたなら、それが正常な反応です。7つの質問に意味を持たせるには、発注側にも自社の粗利率という物差しが要ります。
もし現状の可視化から始めたいという場合は、店舗URLをいただければ公開情報の範囲で改善余地をレポートにしてお返ししています。もちろん、その結果を持って他社に相見積もりを取っていただいて構いません。判断材料が増えることが目的です。
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