自社の教育系ECブランドの公式SNS運用を、動画とキャプションまで生成AIで日次生成しています。2026年8月下旬、そのAIが存在しない商品名を発明して投稿寸前まで乗せてきたことがありました。
混入したのは「順番ポスター」という語。実在するのは「ひらがなポスター」「お風呂ポスター」といった一般名だけで、AIは「順番に並べる」という子どもの行動の工夫を、勝手に固有名詞化してしまったのです。経営者から「公式アカウントなので勝手なワードは使わないで」と指摘され、その日のうちに恒久対策を入れました。
この記事は、AIをEC実務(商品ページ・広告文・SNS)に使うメーカーが増えている前提で、「AIは何を捏造するか」「どこに機械の網を張るか」を、私たちの実話ベースで整理したメモです。
なぜ「存在しない商品名」が公式アカウントで致命傷になるか
公式アカウントに来る人の多くは、購入前の指名検索ユーザーです。「ブランド名+商品名」で調べて、公式が言っていることを事実として受け取ります。ここに存在しない商品名が並ぶと、次の3つが同時に起きます。
- 誤認:「そんな商品があるのか」と思わせてしまう(実在しない)
- 信頼の毀損:後で無いと分かったとき、公式の他の発信も疑われる
- 景表法リスクの芽:無い商品・無い機能・無い受賞歴を書けば、優良誤認の入り口になる
特にやっかいなのは、AIの捏造は文章として自然な点です。「順番ポスター」は日本語として違和感がなく、レビュー担当が急いでいると素通りします。人のチェックだけに頼る運用は、いつか必ず抜けます。
私たちが入れた3層ガード
免責のためではなく、人の目に届く前に落とすための3層です。1層では足りない、が結論です。
① 生成プロンプトの「絶対条件」に明記する
生成AIに渡す指示の冒頭に、優先度の高い禁止事項として次を入れました。
- 商品への言及は実在する一般名のみを使う(例:ひらがなポスター、お風呂ポスター)
- 新しい固有名詞を発明しない(「◯◯ポスター」「◯◯セット」等を創作しない)
- 商品名・機能・受賞歴・数字・出典は、指示で明示的に与えられたものだけを使う
これで生成物の質はかなり上がります。ただしAIは、文脈が滑らかになる方向に引っ張られるので、プロンプトだけでは完全には防げません。だから②が要ります。
② 禁止語句リストによる機械チェック(不採用ゲート)
生成後、投稿キューに入れる前にスクリプトで走査します。
- 禁止語句リスト(社内で発生した造語・過去の誤生成語を蓄積)にマッチしたらその場で不採用
- 「〇〇ポスター」「〇〇セット」等、商品名っぽい未登録の固有名詞パターンは要注意フラグ
- 不採用になった生成物は破棄ではなく別ログに残し、翌週のプロンプト改善に回す
ポイントは、「疑わしきは落とす」で運用することです。人のレビュー前に落ちるので、レビュー担当の判断負荷が下がり、結果的にチェック精度も上がります。
③ 人が読むガイドラインにも同じ禁止を書く
最後の砦は人のレビューです。①②をすり抜けた生成物を捕まえるために、レビュー担当が読むガイドラインに①と同じ文言を書きました。
- レビュー時のチェック項目に「実在しない商品名・機能・受賞歴が入っていないか」を追加
- 判断に迷ったら公式サイトの商品一覧と照合する運用にする
①②③で言っていることを揃えると、AIと人の判断基準が一致して、投稿までの導線全体で同じ網が張られます。
同時期に決めた関連ルール:引用の捏造も同格で禁止
造語ガードと同じタイミングで、出典の扱いも明文化しました。
- 出典の引用はその調査が実際に報告している範囲だけを書く
- 無関係な調査を流用したり、テーマに引き寄せて言い換えたりするのは捏造と同格として禁止
- 公的機関・業界公式・一次情報を第一選択にする
AIは「〜という調査があります」と自然に書きますが、指示で与えていない出典は基本的に信じないほうが安全です。
EC実務への着地:AIに書かせるなら「疑う3点セット」
商品ページ・広告文・SNSをAIに書かせるメーカーが増えていますが、AIは「無い機能」「無い受賞歴」「無い根拠」も自然な文で書きます。生成段のガードは免責になりません。人のチェックを残す前提で、機械の網を先に張るのが実務的です。
判断基準として、AIが出したら疑う3点セットを運用しています。
- 固有名詞:商品名・人名・受賞名・機関名(指示に無いものは疑う)
- 数字:シェア・順位・%(実測=社内記録と、仮の計算例を必ず区別する)
- 出典:調査名・論文・機関名(実在確認できないものは削る)
まとめ:3層ガードのチェックリスト
AIをEC公式チャネルで使うなら、最低限これを揃えてから走らせてください。
- [ ] 生成プロンプトの絶対条件に「実在の一般名のみ・固有名詞を発明しない」を明記した
- [ ] 生成物を投稿キューに入れる前に走る禁止語句チェックスクリプトがある
- [ ] 人のレビューガイドラインに、①と同じ禁止文言が書いてある
- [ ] 数字は「実測」と「仮の計算例」を本文で区別している
- [ ] 出典は「指示で与えたもの」しか使わない運用になっている
1層だけだと必ず抜けます。3層を揃えて、はじめて公式アカウントで使える運用になります。
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