自社ECで販売する学習ポスター(A2・元素周期表)の制作で、外部デザイナーから届く校正PDFを人の目視だけでチェックしていた頃、原子量の数値ミスや修正の取りこぼしが最後まで残る問題に何度もぶつかった。刷ってから気づけば全ロット刷り直しで、広告後の粗利は簡単に吹き飛ぶ。そこで生成AIとスクリプトを組み合わせて「テキスト全件差分+ピクセル差分」を回す運用に切り替えた。実際に何を回して、何が引っかかったかの実話メモを残す。
やったこと(3工程)
- PDFからテキストを構造化抽出→修正依頼と全項目照合:修正依頼は番号付きの表で渡してあるので、依頼票と抽出テキストを機械的に突き合わせて「反映されている/されていない」を1件ずつラベル付けする。
- 前の版との全面ピクセル差分:同じ座標に重ねて画素差を可視化し、「依頼していない場所が動いていないか(デグレ)」を確認する。フォント差し替えや流し直しで、頼んでいない箇所が1文字ずれることは珍しくない。
- 数字は全件抽出して基準値と照合:原子量など118元素分は専用フォント(グリフだけ入ったフォント)で埋め込まれていて、そのまま抽出すると文字化けする。文字対応(グリフ→数字)を復元してから全件抽出し、公的な基準値と照合した。
実際に引っかかったこと
- ある版:原子量15元素分が旧値のまま(依頼票では更新指示済み)。
- 別の版:1元素だけ、隣の値と同じ数字にデグレ(前版では正しかった値が、流し直しで隣とコピペされた状態になっていた)。
- 同じ行の隣接項目のうち1つだけ直してもう1つを見落とした修正漏れ。
- 最終の入稿データ(アウトライン化済み)は校了版との全面照合で、改行位置が1文字ぶん動いた3行以外に差分なし、と判定して入稿可に。
目視だけで拾えたか?と正直に振り返ると、15箇所のうち数箇所は気づけたと思う。ただ「全部拾えた」と言い切れないから、実データで確認する運用に置き換えた、というのが本音。
人が残る場所(AIに任せない判断)
- どの差分が実害か:改行位置の移動は無害、数値の違いは致命、色味の微差は要相談。この線引きは人が決める。
- デザイナーへの伝え方:機械が出した差分リストをそのまま投げると角が立つので、優先度と「なぜ直したいか」を添えて渡す。
- 専門家への確認:元素周期表なら理科教育に詳しい監修者。数字が公的基準と一致していても、表記ルール(有効数字・括弧の使い方)は専門家判断。
EC実務への着地:誤植は広告後粗利を直接削る
印刷物・パッケージ・同梱物の誤植は、返品・低評価レビュー・「表示と違う」という景表法上の指摘に直結する。刷り直しコストは1ロット丸ごと。仮に販売価格3,000円・広告後粗利率20%の商品で、刷り直し10万円が発生したら、約167個ぶんの粗利がゼロになる計算例になる(あくまで仮の計算例)。広告のCPCを詰める前に、この種の「一発で粗利を溶かす事故」を潰しておく方がROIが高い場面は多い。
チェックリスト:印刷物の校正で最低限やること
- [ ] 修正依頼は番号付きの表で渡す(口頭・チャットだけで残さない)
- [ ] 納品ごとに前版との差分を機械で取る(目視だけに頼らない)
- [ ] 数字は抽出して照合する(原子量・成分値・型番・価格・電話番号など)
- [ ] 「直しました」の申告ではなく実データで確認する
- [ ] 最終入稿データ(アウトライン化後)も校了版と全面照合する
- [ ] どの差分が実害かの判断基準を先に決めておく(改行移動は無害/数値違いは致命 等)
まとめ
生成AIは「校正の目を増やす」道具として、印刷物のような一発勝負の制作物と相性が良い。ただし判断は人に残る。実データで確認する運用に切り替えるだけで、事故率は目に見えて下がる。
自社ECで扱う商品ページ・広告クリエイティブ・同梱物まわりで「実は目視だけで運用している」箇所があれば、そこが次に事故の起きる場所かもしれない。店舗URLでの無料EC診断もやっています:https://ec-sekitoba.jp/#contact