自動で集めた情報をそのまま動画に載せると、何が起きるか。2026年9月上旬、自社で運用しているSNSの商品紹介動画で、紹介した商品すべてに「ベストセラー1位」のバッジが付いていました。
この記事では、何が起きていたのか、判定を直さずに訴求そのものをやめた理由、そして自動取得した表示を世に出す前に見る4項目を書きます。EC の商品ページやSNSを自動生成で回している方に、そのまま使える判断基準として持ち帰ってもらえればと思います。
3商品を紹介する動画で、3件とも「1位」だった
自社のSNSでは、他社商品も含めて「〇〇に使える3選」を紹介するリール動画を作っています。商品名・評価・画像は商品ページから自動で取得し、動画とサイト用カードをAIと一緒に組んだパイプラインで描画する形です。
2026年9月2日、そこに「ベストセラー1位なら表示する」という判定を足しました。判定の中身は単純で、商品ページの中に「ベストセラー1位」という文字列があるかどうかを見るだけです。
9月上旬、代表が出来上がった動画を確認していて気づきました。3商品を紹介する動画で、3件とも判定が真になっている。原因は、商品ページ内の関連商品の帯に同じ文字列が入っていて、それを拾っていたことでした。文字列があるかどうかは見ていたのに、その文字列がページのどこから来たのかを見ていなかった、という話です。
判定を直す案はあった。それでもやめた
対象商品の情報が載っている領域に限定して探す、という直し方はあります。技術的にはそちらのほうが「正しい修正」に見えます。
それでも代表の判断は「事実確認できない訴求は出さない」でした。基準はひとつです。
その表示を、掲載している間ずっと事実だと保証できるか。
ランキングは「いつ・どのカテゴリで」が変わる情報です。動画を作った時点で1位でも、投稿された日も、その動画が1か月後に再生される日も1位である保証はどこにもない。判定を厳密にしても、この性質は消えません。確認し続けられないものを、仕組みの精度だけで支えようとするのは無理がある、という結論でした。
2026年9月9日、取得の判定、バッジの「ベストセラー1位」、ナレーションの「カテゴリのベストセラー1位だ」を、すべて削除しました。
置き換え先は「その場で確かめられる数字」
代わりに取得しているのは、評価とレビュー件数です。表示は「★4.6(1,472件)」の形にしました(表示例です)。
- バッジに出すのは★と件数だけ。順位や「売れています」といった言葉は入れない
- ナレーションは星だけを読み、件数は読まない(件数は日々動くため、音声として固定しない)
- 価格も動画では訴求しない。価格は変わるためです
「1位」は解釈が入りますが、レビュー件数は取得した時点でページに出ている数字そのものです。取得した日付と一緒に示せば、後から根拠を説明できます。訴求としては地味になりますが、後から説明できます。
景表法の視点:自動取得の誤りは、そのまま優良誤認になる
景品表示法が禁じている優良誤認表示は、実際よりも著しく優良だと示す表示のことです。ここで重要なのは、意図があったかどうかは問われない点です。「文字列の拾い間違いでした」は、表示を見た人にとって何の意味も持ちません。
No.1表示については、消費者庁が2024年9月に実態調査報告書を公表しており、調査の裏付けがない・調査条件が表示から分からないNo.1表示が問題視されています。自動取得したランキング表示は、まさに「いつ・どのカテゴリで測ったのか」を自分で説明できない表示になりがちです。
自動取得した表示を出す前に見る4項目
今回から、自動で取ってきた値を表に出す前にこの4つを見るようにしました。
- 取得元の文字列はどこから来たか(対象そのものの情報か、隣にある別の何かか)
- 全件が同じ値になっていないか(3件中3件が「1位」なら、まず判定を疑う)
- 時間で変わる情報か(順位・価格・在庫・キャンペーンは全部これ)
- 外れた時に誰が気づくか(気づく人がいない表示は、間違ったまま流れ続ける)
3つ目でひっかかるものは、表示しないか、確認できる別の数字に置き換える。4つ目に答えられないものは、そもそも自動で出さない。この2つを決めておくと、判断が速くなります。
人が残った場所
AIに任せたのは、情報の収集と描画です。残ったのは2つでした。ひとつは「この訴求はやめる」という判断。もうひとつは、出来上がった動画を人が最後に見ること。今回の件は、まさにその最終確認で見つかっています。
自動化のどこに人を残すかを決めていないと、精度の高い仕組みほど誰もチェックしなくなります。
EC実務への着地
商品ページやSNSの自動生成で「ランキング」「No.1」「売れている」を使う前に、その根拠を出し続けられるかを確かめてください。
これは体面の問題ではなく、利益の問題でもあります。確認できない訴求は、一時的にクリックや転換率を押し上げることがあっても、返品・低評価・掲載の取り下げという形で後から跳ね返ってくることがあります。広告費を乗せた商品ほど、戻ってきたときの傷は大きくなる。広告後に手元へ残る粗利で見ると、確かめられない訴求はコストの高い賭けです。
削って地味になった分は、確かめられる数字の精度で取り返す。今回はそう決めました。
自社の商品ページやSNSで、いま出している表示のうち「時間で変わるもの」がどれだけあるか、一度数えてみてください。店舗URLだけでできる無料EC診断もやっています:https://ec-sekitoba.jp/#contact