AIに大量の単純作業を任せるとき、最初に詰まったのは精度ではなく「枠」でした。2026年9月18日の夜、私たちは走らせていた営業先リスト作りを自分たちで止めました。
この記事では、何社処理した時点で止めたのか、止めると決めた材料は何だったのか、止めるときに何を残しておくと再開が楽だったのかを、実際の数字で書きます。AIで商品登録やレビュー分析を大量に回そうとしている方に、そのまま使える判断基準になるはずです。
4,962社を25社ずつ、199バッチに割った
やっていたのは自社の営業先リスト作りです。中小メーカー約4,962社について「公式サイトと会社の連絡先」を特定する作業を、AIエージェントに25社ずつのバッチで任せました。バッチ数は約199。これを4並列で走らせます。
採用条件は人が先に決めました。
- 公式サイト本体で電話番号が一致していること
- または、社名・所在地・電話のうち2点が一致していること
- 第三者サイトにしか載っていない情報は採用しない
この線引きはAIに決めさせていません。リストの質は後工程の営業効率に直結するので、どこまでを「確かな情報」と呼ぶかは人が持つべき判断だと考えています。
夜7時半、エージェントが一斉に止まった
9月18日の午後7時半ごろ、短時間の利用上限にあたってエージェントが一斉に停止しました。確認すると、週の利用枠がすでに79%に達していました。
残りは112バッチ。これを4並列で回し切れば、同じ枠を使っている動画生成や記事作成が数日止まるおそれがありました。並列実行は速いのですが、速い分だけ共有資源を食います。
午後9時15分に新規起動を止め、代表に判断を仰ぎました。
止める材料は「進捗率」ではなく「達成度」
代表の判断は「週の枠がリセットされる9月22日以降に再開する」。理由は2つでした。
- 会社のメールアドレスが取れた社数が、その日のうちに実質1万社を超え、目標に届いていたこと
- 週の枠を、他の業務に残しておきたかったこと
止めた時点で処理2,179社、未処理2,783社。進捗率で見れば半分以下で、感覚的には「もったいない」場面です。それでも止められたのは、見ていた数字が進捗率ではなく、目的に対する達成度だったからでした。
手順書にはこう書き足しました。「数十バッチごとに使用量を見て、70%を超えたら減速して相談する」。走らせてから考えると、だいたい手遅れになります。
止める前提で「再開キット」を残す
止めると決めた後、その場で残したのは次の4点です。
- 再開用の指示書(採用条件と中断位置を明記)
- 点検スクリプト(取得済みデータの整合チェック)
- 合流スクリプト(バッチ結果を本体リストへ反映)
- 未処理分を組み直した112バッチ
中断は事故ではなく前提として設計しておく、という考え方です。
再開して見つかった不具合が2つ
9月24日、枠が戻った状態から4並列で12バッチ(300社)を処理し、サイト162社・会社メール30社を反映しました。
この再開時に、合流スクリプトが新しいバッチのファイル名を拾えない不具合と、処理中の部分結果が混ざる不具合が見つかり、その場で直しました。再開の前に小さく回したことで、残りを流し込む前に直せました。
EC実務に置き換えると
商品登録、レビュー分析、競合ページの収集。EC運用でAIに任せたくなる作業はどれも「量」の仕事で、並列にすれば速くなります。だからこそ設計すべきは速さではなく枠配分です。
判断基準として使えるのは次の3つです。
- 着手前に「この作業に週の枠の何%まで使ってよいか」を決める
- 70%を超えたら減速して相談、を手順書に書いておく
- 締切のない作業なら、枠は売上と粗利に直結する業務に残す
リスト作りも商品登録も、それ自体は売上になりません。最終的に広告後粗利に効くのは、作った資産をどう使うかの方です。だからこそ「今日ここまでで止める」と決められることが、そのまま利益設計になります。
まとめ
- 並列実行は「枠を何%まで使ってよいか」を先に決める
- 止める判断材料は進捗率ではなく、目標に対してどこまで来たか
- 止める前提で、指示書・点検・合流・残バッチの再開キットを残す
AIは速く走りますが、どこで止めるかは人が決めるしかありませんでした。
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