AIに台本やコピーを量産させていると、1本ずつは問題ないのに、並べると同じ話ばかりになっていることがあります。
この記事では、2026年10月7日に私たちが自社ブランドの公式SNSで経験した差し戻しの経緯を書きます。あわせて、そこから作った「方針の根拠を自社データに戻すための判断基準」と、「自動化を止めるスイッチ」のチェックリストも共有します。
個別にはOKなのに、並べると「全部お風呂」だった
私たちは知育ポスターのブランド公式アカウントで、日次の仕組みを回しています。AIが台本と画像を作り、レビュー担当がチャットで承認したものだけを予約投稿する流れです。
10月7日の朝、レビュー担当から「全部お風呂」と指摘が入りました。1本ずつなら承認できる内容でしたが、並べると題材が1か所に寄っていました。
私たちは同日午前のうちに、お風呂・朝・食卓・おでかけなど、生活場面8つのローテーションを入れました。ところが代表から差し戻されます。「生活の場面に限る必要は全くない。子育て全般の知識やティップスが対象のはず。過去に反響のあったものを分析して方針を組み立てていなかったか。方針がぶれている」。
振り返ると、元の「お風呂専門」という方針は他社の参考事例から決めたもので、自社の反響データは使っていませんでした。朝の修正もその枠を「生活場面専門」に広げただけで、対象はルーティンに絞ったままでした。指摘を受けて「どの場面か」は動かしたものの、「何を対象にするか」までは立ち返っていなかったのが本当の問題でした。
やり直し:反響データから対象を組み直す
このアカウントはまだ投稿6本で、自分の反響データがありません。そこで、同じ親層に向けて同じ生成パイプラインで運用している別アカウントの実測453本を代わりの指標にしました。題材ごとに、再生数の中央値と保存率(再生数に対する保存数の割合。‰=1,000分の1)を比べています。
- ルーティン・生活リズムの題材は、再生・保存のどちらも最も弱い結果でした(再生の中央値1,244・保存率2.1‰。その他の題材は1,533・3.4‰)
- 肯定的な言い方の投稿は、否定的な言い方の投稿と再生数が同じくらいで、保存率は上回りました(4.9‰と3.9‰)
- 伸びる投稿の構造は「親がつい止めてしまう、または意味がないと思いがちな子どもの行動1つ × それで育つ力」でした。お手伝い・自立の題材は90%が1,000再生を超え、保存率は8.2‰でした
この結果をもとに、5つの柱の配分・テーマ例20本・判断事項5点をまとめた提案書を作り、方向の確認に回しました。
見直しの間は、自動生成を止める
同時に、その日12:30の日次生成を止めました。一時停止用のファイルを1つ置くだけで、生成・描画・14:05のレビュー依頼までがまとめて止まる仕組みです。却下された方針で作った台本を、レビューに回さないためです。再開するときはそのファイルを消すだけです。描画済みの75本には手を付けていません。
AIは「何を対象にするか」を決めてくれません。対象の定義、方針の承認、そして「全部お風呂」という指摘そのものは、人が担う部分として残りました。
EC実務に置き換える:判断基準とチェックリスト
商品ページのコピーや広告文をAIで量産するときにも、同じことが起こります。方針の根拠が「他社事例」になっているなら、自社の実測値(保存率・CVR・採択率)に戻してください。訴求軸が偏ると、同じ層に広告費をかけ続けることになり、広告費を引いた後の粗利にも響きます。
判断基準:題材(訴求軸)ごとに「反応量の中央値」と「深い反応の率」を並べて比べます。SNSなら再生の中央値と保存率、商品ページならアクセス数とCVRです。両方とも最も弱い題材が方針の中心にあるなら、枠を広げるのではなく対象から組み直します。
チェックリスト:
- 自動化を止める手段が、最初から付いているか
- 方針の根拠は自社データか、他社事例か
- 1本ずつの承認だけでなく、並べて偏りを確認したか
- 指摘への修正が「場面」の調整で終わらず、「対象」まで立ち返っているか
- 方針レベルの変更は、方向を確認してから自動化に乗せているか
まとめ
「1本ずつはOKでも全体では偏る」という問題は、並べて初めて見えます。すぐに枠を広げるのは対症療法です。先にやるべきなのは、反響データから「何を対象にするか」を組み直すことでした。そして見直しの間に止めておけるスイッチを、自動化の最初から付けておくことです。
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