送料無料ラインを、競合を見て「だいたいこのくらい」で決めていませんか。
このラインは本来、自店の平均購入点数と単品粗利から逆算して置くものです。この記事では、無料ラインを1点購入の赤字を避けつつ2点目を誘発する位置に置くための計算手順を書きます。
送料を店舗が持った瞬間、粗利はいくら消えるか
まず、送料負担が単品粗利にどう効くかを実額で見ます。以下はすべて説明のための仮の計算例です。送料はサイズ区分・地域・契約で変わるため、自社の実際の運賃表でご確認ください。
- 販売価格:金額 2,500円
- 商品原価:金額 −800円
- 販売手数料(10%と仮定):金額 −250円
- 梱包資材:金額 −80円
- 送料負担前の粗利:金額 1,370円(粗利率 54.8%)
- 送料(宅配60サイズと仮定):金額 −700円
- 送料負担後の粗利:金額 670円(粗利率 26.8%)
粗利率が 54.8% から 26.8% へ半減 しました。送料は1件あたりの固定費なので、単価が低い商品ほど致命的に効きます。
そしてこの粗利率がそのまま損益分岐ACoS(広告費がこの比率を超えると赤字になる線)になります。広告を打てる余地が半分になった、という意味でもあります。
無料ラインは「1点で赤字にならない価格」から始める
無料ラインを決める手順はシンプルです。
ステップ1:1点購入で送料を負担しても粗利が残る価格を出す
上の例では、送料700円を吸収したうえで粗利を確保するには、送料負担後の粗利がプラスであれば成立します。2,500円の商品なら670円残るので成立しています。
一方、1,200円の商品ではこうなります。
- 1,200 − 原価400 − 手数料120 − 梱包80 − 送料700 = −100円
1点だけ買われると赤字です。この商品を無料ライン以下で単品購入させてはいけない、ということが数字で分かります。
ステップ2:平均購入点数を確認する
ここが本題です。平均購入点数(1注文あたり何点買われているか)が
- 1.0 に張り付いている店:無料ラインを下げても2点目は増えません。送料を配っているだけになります
- 1.3〜1.8 の店:無料ラインは「あと1点」を誘発するレバーとして機能します
ステップ3:無料ラインを「主力価格帯の約1.5〜2倍」に置く
主力が2,500円なら、無料ラインは4,000〜5,000円あたりが候補になります。2点買えば届く位置です。
3,000円に置くと1点でほぼ届いてしまい、送料を無条件に配ることになります。逆に8,000円に置くと3点以上が必要になり、多くの人にとって「届かないから諦める」ラインになります。
無料ラインを動かしたときに何が起きるか
- 低すぎる(1点で届く):起きやすいこと 送料を全件負担。粗利率が構造的に下がる
- 適正(2点で届く):起きやすいこと 平均購入点数と客単価が上がり、1件あたりの送料負担が相対的に軽くなる
- 高すぎる(3点以上必要):起きやすいこと カゴ落ちが増える。無料ラインが機能しない
2点購入されると、送料700円が2点で割られて1点あたり350円の負担になります。同じ送料でも、点数が増えれば粗利率は戻ります。無料ラインの本質は送料の割引ではなく、点数を増やして送料を薄めることにあります。
判断基準:この順番で手を打つ
- 平均購入点数が1.0付近 → 無料ラインをいじる前に、セット商品・同梱提案・関連商品の導線を作る。買い合わせる対象がないのに無料ラインだけ下げても、送料を配って終わります
- 平均購入点数が1.3以上 → 無料ラインを主力価格帯の1.5〜2倍に調整する効果が出やすい
- 低単価の主力がある → その商品は単品購入で赤字にならないか必ず検算する。赤字なら、単品売りをやめてセット化するか、価格を見直す
送料設計チェックリスト
- 主力SKUの「送料負担後」の粗利を実額で出したか
- 1点購入で赤字になるSKUがないか確認したか
- 平均購入点数を把握しているか
- 無料ラインは主力価格帯の1.5〜2倍になっているか
- 無料ライン到達まであといくらかを、カート画面で伝えているか
- サイズ区分が変わる商品(同梱で送料が跳ねる組み合わせ)を把握しているか
送料は「みんなやっているから無料」で流すには重すぎるコストです。まず主力1SKUの送料負担後の粗利を出してみてください。
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