「欠品だけは絶対に避けろ」で発注していると、たいてい在庫が膨らみます。
欠品も過剰在庫も、どちらも利益を削ります。この記事では両方の損失を同じ金額の物差しに乗せて、在庫水準に応じて広告のアクセルを踏み分ける方法を書きます。
欠品と過剰在庫、どちらがいくら損か
以下はすべて説明のための仮の計算例です。保管料の料率は時期・サイズ・保管期間により変わるため、最新は各モールの公式情報をご確認ください。
欠品1週間の損失
- 通常の販売数:週20個
- 単品粗利:1,400円
- 逸失粗利:20 × 1,400 = 28,000円
- 加えて、販売実績が途切れることによる検索順位・カート獲得への影響、広告を止めて再開する際の立ち上げ直し
過剰在庫(200個を6ヶ月滞留)の損失
- 保管料:仮に1個あたり月20円として、200 × 20 × 6 = 24,000円
- 資金拘束:原価1,000円 × 200個 = 200,000円が動かせない
- 最終的に値下げ処分した場合:1個500円の値引きなら 100,000円の粗利消失
並べると分かるのは、欠品は一時的な損失、過剰在庫はじわじわ効く損失だということです。そして多くの店舗で最後に効くのは、処分時の値下げです。
「欠品ゼロ」を目標にすると、この右側の損失が構造的に膨らみます。
発注点の基本は1段だけ
発注点は次の考え方で置きます。
> 発注点 =(1日あたりの販売数 × 補充リードタイム)+ 安全在庫
- 1日3個売れ、補充に14日かかるなら:3 × 14 = 42個
- 安全在庫を1週間分(21個)持つなら、発注点は 63個
ここは教科書どおりで構いません。問題はこの先です。
本題:在庫日数で広告のアクセルを踏み分ける
在庫日数(今の在庫が何日分か = 在庫数 ÷ 1日あたり販売数)を、広告予算のスイッチとして使います。
- 15日未満:状態 欠品が近い/広告の扱い 広告を絞る。入札を下げるか一時停止。売れない在庫に広告費を払わない
- 15〜30日:状態 やや薄い/広告の扱い 現状維持。攻めの増額はしない
- 30〜60日:状態 適正/広告の扱い 通常運転。損益分岐ACoS内で攻める
- 60〜90日:状態 やや多い/広告の扱い 広告を増額する候補。回転を上げにいく
- 90日超:状態 滞留/広告の扱い 保管料が効き始める。広告増額+価格・セット販売の見直しを同時に
ポイントは、在庫日数が多いときこそ広告を踏むという点です。滞留在庫は放置すると保管料と値下げ処分で確実に粗利を失います。であれば、損益分岐ACoSの範囲内で広告費を使ってでも回転させたほうが、手元に残る金額は大きくなります。
逆に在庫が薄いときに広告を回すのは、欠品を早めているだけです。ここは多くの店舗で逆になっています。
滞留在庫の出口を判断する
90日を超えた在庫は、選択肢を金額で比べます。
- 広告を増やして回転させる:判断の目安 損益分岐ACoS内に収まるなら最優先
- 値下げして売り切る:判断の目安 値下げ後の粗利 > 今後の保管料の累計、なら実行
- セット・同梱で消化する:判断の目安 単体では動かないが、他商品の付加価値になる場合
- 返送・処分:判断の目安 上のどれも成立しない場合の最終手段
判断軸は一貫していて、今後かかる保管コストと、今動かして得られる粗利のどちらが大きいかです。「もう少し待てば売れるかも」で持ち続けるのが、金額としては一番高くつきます。
在庫と広告の連動チェックリスト
- SKU別の在庫日数を出しているか(在庫数だけ見ていないか)
- 補充リードタイムを実測しているか(想定ではなく実績)
- 在庫日数15日未満のSKUで、広告を回し続けていないか
- 在庫日数90日超のSKUを把握しているか
- 滞留在庫の今後の保管料累計を金額で出したか
- 欠品時に広告を止める運用が仕組みになっているか(都度の手動判断になっていないか)
自社で回すのが難しいと感じたら
この連動は、SKU別の在庫日数と広告レポートを毎日同じ場所で見られる状態になって初めて回ります。逆に言うと、数字が別々の場所にあるうちは、判断が後手に回り続けます。
もし今それが揃っていないなら、まずは主力SKUだけでも在庫日数と実ACoSを並べてみてください。それだけで止めるべき広告と増やすべき広告が見えてきます。
そこも含めて手が回らない場合は、店舗URLをいただければ公開情報の範囲で改善余地をレポートにしてお返ししています。まず現状を可視化しませんか。
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