返品は「返金して終わり」ではありません。
返金で消えるのは売上ですが、実際に失われるのはそれだけではない。この記事では、返品1件あたりの実コストを分解して、返品率が広告後粗利に効く金額を出します。数字にすると、ページを直す優先順位が変わります。
返品1件のコストを分解する
以下はすべて説明のための仮の計算例です。実際の返品対応の費用区分は各モールの規定と契約により異なります。
返品1件で発生するものを並べます。
- 粗利の消失:内容 その1件で得るはずだった単品粗利がゼロになる
- 往路の送料:内容 発送済みの送料は戻らない
- 復路の送料:内容 返送費用(負担区分は理由により変わる)
- 再検品・再梱包の手間:内容 人件費。1件15分なら実質的な人件費が発生
- 再販できない場合の原価損:内容 開封済み・破損で処分になれば原価がまるごと損失
数字を入れます。
- 販売価格 3,500円、単品粗利 1,400円
- 往路送料 700円(既に支払い済み)
- 復路送料 700円
- 再検品・再梱包 15分 = 約400円相当
- 再販可能率 70%(3割は処分と仮定、原価1,000円)
返品1件の実コスト
- 失う粗利:1,400円
- 往復送料:1,400円
- 再検品・再梱包:400円
- 原価損(0.3 × 1,000円):300円
- 合計:約3,500円
販売価格とほぼ同額が1件で飛びます。「返金しただけ」の感覚と、実際に失う金額はここまで違います。
返品率が広告後粗利に効く金額
月100個売れている商品で計算します。単品粗利1,400円なので、返品ゼロなら月の粗利は140,000円です。
- 0%:返品件数 0件/返品コスト合計 0円/残る粗利 140,000円/目減り —
- 1%:返品件数 1件/返品コスト合計 3,500円/残る粗利 136,500円/目減り 2.5%
- 3%:返品件数 3件/返品コスト合計 10,500円/残る粗利 129,500円/目減り 7.5%
- 5%:返品件数 5件/返品コスト合計 17,500円/残る粗利 122,500円/目減り 12.5%
返品率5%は、粗利の12.5%を持っていきます。
ここに広告費が乗ると、影響はさらに大きくなります。広告後粗利が粗利の半分しか残らない商品なら、返品率5%は広告後粗利の25%相当を削っている計算です。ACoSを1ポイント下げる努力より、返品率を2ポイント下げるほうが効く場面は普通にあります。
返品理由は4つに切り分ける
対策を考える前に、返品理由を分けます。打ち手の置き場所が違うからです。
- イメージ違い:主な原因 写真・説明が実物と乖離/打ち手の場所 商品ページ
- サイズ・寸法が合わない:主な原因 寸法表記の不足・分かりにくさ/打ち手の場所 商品ページ
- 配送中の破損:主な原因 梱包・輸送/打ち手の場所 物流・梱包資材
- 初期不良:主な原因 品質・検品/打ち手の場所 仕入れ・品質管理
上2つはページで防げます。下2つはページをいくら直しても減りません。ここを混ぜたまま「返品が多いからページを直そう」とすると、直しても数字が動かず、施策そのものへの信頼が落ちます。
まず理由別に件数を数える。それが最初の一手です。
判断基準:この閾値を超えたら広告よりページ
if-thenの形にします。
- 返品理由の過半がイメージ違い・サイズ → 広告予算を増やす前にページを直す。写真・寸法表記・使用シーンの追加が先。このSKUに広告を足すのは、返品を増やす行為になる
- 返品理由の過半が破損 → 梱包資材と配送区分を見直す。ページは触っても効かない
- 返品理由の過半が初期不良 → 検品工程と仕入先の見直し。ここで広告を回すと、悪いレビューを買うことになる
- 返品率が同カテゴリの他SKUより明らかに高い → そのSKUだけ広告を絞り、原因の特定を優先する
返品率が高い商品に広告を厚く当てるのは、赤字を効率よく積む行為です。返品コストは広告費と違って後から効いてくるので、レポート上は気づきにくい。ここが怖いところです。
返品コスト点検チェックリスト
- 返品1件あたりの実コストを、往復送料・手間・原価損まで含めて出したか
- SKU別の返品率を出しているか(全体平均だけ見ていないか)
- 返品理由を4分類で数えているか
- イメージ違い・サイズが主因のSKUで、広告を増やしていないか
- 返品率の高いSKUの寸法表記が、実物と照合されているか
- 再販可能率(返品のうち再び売れる割合)を把握しているか
返品は減点として扱われがちですが、理由を数えれば改善点が具体的に出てくる情報源でもあります。まず1SKU、直近1ヶ月の返品理由を数えてみてください。
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