「相手が値下げしてきた。追いますか?」——このメッセージが来た瞬間、多くのEC担当者は"感覚"で値下げを判断してしまう。でも一度追従を始めると相手も追従し、両者の広告後粗利が消えるまで止まらない。
この記事では、値下げ競争に入る前に必ず出しておくべき「下限価格」の計算と、下限を割られた時に降りる判断のやり方をまとめる。
1. 最安値追従が「全員赤字」に着地する構造
自動追従ツールで最安値に張り付いたとする。相手も同じことをしていれば、価格は 1 円ずつ削れ合いながら両者の広告後粗利がゼロになる売価まで一直線に落ちる。片方が根負けするまで止まらない。
さらに悪いのは、値下げの効果がカテゴリ全体の相場を引き下げてしまうこと。競争が終わった後も、元の価格帯には戻りにくい。「勝った」側も粗利が薄いままの土俵に閉じ込められる。
2. 下限価格の計算式(仮の計算例)
先に決めておくべきは「ここより下では絶対に売らない」売価=下限価格。広告後粗利がゼロになる売価として計算する。以下は説明のための仮の計算例(実際の料率・条件はカテゴリ・時期で異なる。最新は各モール公式を参照)。
例:定価 3,980 円、原価 1,200 円の商品(Amazon FBA・広告あり)
- 原価:1,200 円
- 販売手数料(15% 想定):597 円
- FBA 手数料(想定):500 円
- 保管・返品リスク:50 円
- ポイント原資(1%):40 円
- 広告費(ACoS 20% 想定):796 円
合計コスト:3,183 円 → 広告後粗利ゼロの売価=3,183 円
つまり、この SKU は 3,183 円を割ったら 1 個売るごとに広告費すら回収できない。ここが下限。実務では「広告後粗利率 X% を確保する売価」を下限に設定するのが妥当(例:粗利率 10% を確保するなら 3,536 円)。
3. 下限を割られた時の 3 つの逃げ道
競合が下限を割ってきたら、追わない。代わりに土俵を変える打ち手を持っておく。
- セット化・同梱で比較の土俵を変える:単品で最安を張るのを諦め、2 個セット・関連品との同梱・付属品追加で「同じものを比較できない状態」にする。単価は上がるが比較検索の外に出られる
- 訴求軸の変更(最安ではなく用途・品質・レビューで選ばれる):1 枚目画像・タイトル・A+ を「価格で選ぶ人」ではなく「用途で選ぶ人」に向け直す。レビュー品質と検索順位の勝負に持ち込む
- チャネル・SKU の再配分:そのモール・その SKU で戦わない。楽天・Yahoo!・自社 EC へリソースを寄せる、あるいはこの SKU の広告を止めて別 SKU に予算を回す。「撤退」ではなく「土俵替え」と考える
4. 値下げ競争に入る前の if-then
一番危険なのは、赤字許容額と期限を決めずに追従を始めること。以下を先に決めておく。
- if 相手が下限価格を割ってきた → then 追わない。訴求軸変更 or SKU 撤退を検討
- if 一時的に追う判断をする → then 「粗利率 △% まで/期間 ○週間まで」を先に決め、超えたら自動で撤退
- if 広告後粗利がすでにマイナス → then 追従ではなく即座に停止(傷を広げない)
「決めておく」が全て。値下げ競争は、判断基準を決めていない側から先に体力が尽きる。
まとめ
- 追従の前に「広告後粗利ゼロの売価=下限価格」を SKU 別に出しておく
- 下限を割られたら追わず、セット化・訴求軸変更・チャネル再配分で土俵を変える
- 追う判断をするなら、赤字許容額と期限を先に決める
自店の下限価格と利益構造を、まず可視化することから始めるのがおすすめ。「SKU 別に広告後粗利を出したいが手が回らない」という段階であれば、赤兎馬の無料 EC 診断で店舗 URL をいただければ改善余地をレポートでお返しします → https://ec-sekitoba.jp/#contact