先日、自社の営業メール文面を新しいコーポレートサイトに合わせて改訂することになった。IT業務効率化・AI導入支援・AI内製化支援・EC運用支援の4本柱に沿って訴求軸を分けるため、生成AIに10パターンの草案を書かせた。
ただし、正本は旧版のまま据え置いた。AIの草案をそのまま使うのではなく、経営者の承認を通った版だけを正本に統合する運用にした。理由はシンプルで、営業メールはBtoBでも法令と信用に直結するからだ。AIは文面の量産が得意でも、送る責任は最後まで人にある。
なぜ「AIの草案を正本にしない」と決めたか
営業メール1通の事故コストは、AIの生産性向上のメリットを一瞬で食いつぶす。特定電子メール法違反は総務省・消費者庁の指導対象になりうるし、景表法の断定表現は事後回収が難しい。相手企業の名前や数値を推測で書けば、信用は一度で失う。
だから草案を書かせる前に、禁止事項を文書化した。プロンプトの冒頭に固定し、AIに毎回守らせる形にする。
AIに書かせる前に決めた5つの禁止事項
- 特定電子メール法のフッタを省略しない:送信者表示と受信拒否の導線(配信停止用URLか連絡先)を必ず入れる。
- 景表法の断定表現を使わない:「必ず」「確実に」「売上◯倍」「絶対に伸びる」はNG。効果は手法の説明に留める。
- 実在クライアントの名前や実績を無断で出さない:許諾のない事例引用は信用を毀損する。匿名化するか、公表済みの範囲だけにする。
- 年商・従業員数などの数値を推測で書かない:AIは「〜と思われます」を平気で書く。裏取りできない数字は削る。
- 相手企業への個別の観察は、実際に確認したことだけ書く:ページを見た事実・公表IR等、根拠のあるもののみ。
この5項目を1枚のドキュメントにまとめ、生成AIへの入力プロンプトの冒頭に固定した。
未決事項はAIに決めさせない
同時に、AIに決めさせないと決めた項目もある。オファーが「無料相談」か「診断レポート」か、配信停止の導線をフォームにするかメール返信にするか、といった設計判断は「要判断」として残し、経営者と詰める工程にした。
AIに文面バリエーションを10通り出させ、その中から選ぶのは人の仕事。オファーの設計・対象リストの絞り込み・送信の承認は、人が残る場所として明確に線を引いた。
EC実務への着地:メーカーの営業メールも構造は同じ
これはBtoBの営業メールに限った話ではない。メーカーが卸先バイヤーや法人顧客に営業メールを出すときも、構造は同じだ。
- 特定電子メール法のフッタは同じく必須
- 景表法の断定表現は商品訴求でも同じくNG(「必ず売れる」「返品ゼロ」)
- 取引先の実名・数値の無断掲載も同じくNG
AIで文面のパターンを増やすほど、法令ガードと承認フローを先に固めないと事故の確率が上がる。生産性が上がっているように見えて、1件の炎上で数か月分の工数を失う構造になる。
チェックリスト:AIに営業メールを書かせる前に
- 禁止事項を1枚の文書にしてからAIに書かせる
- 草案と正本を分ける(送信は必ず承認後の正本)
- 数字と固有名詞は出所を人が確認する
- 配信停止の導線を先に用意する
- オファー設計・対象リスト・送信承認は人が残す
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営業メールもEC運用も、AIで加速する部分と、人が判断する部分の線引きが利益と事故率を決める。もし自社の営業やEC運用の文面設計・承認フローの整理から相談したい場合は、まず店舗URLをお預けください。改善余地をレポートでお返しします(AI導入の相談も同じ窓口です)。
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